書く為の書道用語
ここでは、書の稽古を続けるのに必要と思われる範囲で記述しました。
記述にあたり、類語例解辞典(小学館)、国語辞典第5版(岩波書店)、書学体系研究篇2 書道用語辞典(同朋舎)、楷行草筆順字体字典(三省堂)その他の書道関係資料を参考にしました。
※ 逐次、書道用語を追加記述します。(2020年08月27日)
書 体
楷 書
楷書は、隷書から発展した書体で、点画を崩さない方正な書体を言います。別名、真書とも言います。
行 書
楷書をやや崩した書体であり、書くことが速くできるとともに読みやすい書体です。
草 書
行書を更に崩した書体であり、書くことが速くできるが読む事が難しい書体です。
隷 書
隷書は、篆書を簡略化された書体で、隷書には、波硺をもつ八分と、波硺をもたない古隷があります。
篆 書
篆書は、印章や碑銘に使われている書体です。大篆、小篆があります。
仮 名
- 仮名は、「ひらがな」、「カタカナ」の総称を言います。
- 仮名は漢字から生まれた音節文字であり、反対語に真名があり、仮名に対して漢字のことを言います。
- 仮名は女手、真名は男手とも言います。
- 傍仮名は、漢文体を訓読みする時に漢字の傍らに書いたカタカナを言うようです。今でいうとルビと解釈しても良いと思います。
- 漢文にカタカナでルビを付けて読みやすくしている古典書籍があるようです。
例えば、二玄社が出版している「鎌倉 墨流本和漢朗詠集」の漢文体からも、その様子が伺えます。
現在、私達が日常使っている「ひらがな」、「カタカナ」は、明治33年の小学校令で制定されたようです。
調和体
- 私達が日常において文を書く時は、漢字、ひらがな、カタカナの三つを交えて書くことが普通の文体を調和体と言います。
- 漢字は直線的は線の組み合わせが多く、ひらがなは曲線的な線で構成され、カタカナは、漢字の偏、旁、冠などを利用して作られています。
- 漢字をカタカナは画数が異なるのみで、線の形は似ています。しかし、ひらがなは、漢字とカタカナとは形も線も全く異なります。これを一枚の紙に混ぜながら書くわけですから調和は取れません。
調和の取れない書体を無理に調和させている事から調和体と言われているそうです。 - このことから、漢字の書体はなるべく行書で書き、ひらがなの大きさは漢字の8分の大きさで書くのが良いようです。
稽古に必要な用語
臨 書
書道学習には手本が必要です。
- 優れた古典、法帖等の古典の筆跡を学ぶことを「臨書」言います。
- 手本とする原帖の文字造形を忠実に学ぶことを「形臨」と言います。
- その古典の持つ性情に重きを置いて学ぶことを「意臨」と言います。
- 「形臨」、「意臨」を繰り返し、習熟した上で手本から離れて、「○○らしく」臨する事を「背臨」と言います。
- 「背臨」を応用してその原帖に似せて書く事を「倣書」と言います。
- 手本としている古典や、法帖の全文を臨書する事を「全臨」と言います。
- 手本としている古典や、法帖の一節を臨書する事を「節臨」と言います。
透き写し書き
- 手本の上に紙をのせ、写し書きします。(※ 注意:手本を汚す危険性が多いので、手本のコピーが良いと思います。)
- 字の形を覚えるに有効な稽古になりますので、おすすめです。
- 線の角度や形、懐の形、空間の形など、手本を見ただけでは気が付かない部分を知ることが出来るはずです。
※「透き写し書き」と似た言葉に「双鈎填墨」があります。
「透き写し」とは:薄紙の上に下の文字などを透かして書き写す事(類語例解字典(小学館)から)
「双鈎填墨」とは:文字を透写しにして輪郭を籠字にとり、その中に墨を入れていく方法(書道用語辞典(書学大系 研究篇2)を参考にしました。)本物と同じように復元したものを双鉤填墨と言います。
籠 字
- 字を縁取り、縁取った中に墨を埋めていく書き方の稽古方法の一つです。
- 筆使いの稽古にお薦めです。
余 白
- 布置:字配りを言う。
- 布置章法:作品作成における種々の配慮(文字の大小、文字の配列、墨色の濃淡、潤渇の変化等)余白美:文字を書いている部分に対しての空白の部分を言う。
書道に関連する文の基礎用語
和文と漢文で共通する用語
句について
- 「句」:俳句、短歌、漢詩などで一定の音数、字数で区切った構成単位を言う。(類語例解辞典から引用)
- 「句」を作るという場合は俳句についていう。(類語例解辞典から引用)
- 句の共通する意味:まとまった意味を表す一続きの言葉、文より小さい単位(類語例解辞典から引用)
詩について
「詩」 :文学の一形式。自然や人事などから発する感動や感興を一種のリズムを持つ言語形で表現したもの。
「詩と歌」:昔は漢詩と和歌の意(類語例解辞典から引用)
和文の用語
- 俳句の語は明治に入ってから正岡子規が使ってから一般化した。(類語例解辞典から引用)(:「俳」は、わざおぎ(芸人)・おどけ・たわむれの意)
- 万葉仮名は原文という。
- 変体仮名は本文という。
- 長歌(ちょうか):和歌の一形式五・七の句を繰り返し重ね、終わりを七・七で結ぶもの「ながうた」ともいう。(長唄(ながうた)は三味線に合わせてうたう音曲にのひとつで長歌とは異なります。)
- 短歌(たんか):三十一文字(みそひともじ)又は短文字(みじかもじ)という。
- 長歌に対して五・七・五・七・七の五句よりなる和歌の一種です。
- 始の三句(五・七・五)を上(かみ)の句という。
- 最後の二句(七・七)を下(しも)の句という。
- 反歌(はんか):長歌の後によみそえた短歌をいう。
- 俳句:十七文字(じゅうしちもじ)
- 旋頭歌:古代の歌謡の一つで和歌の形式の五・七・五・七・七の音を基本とします。
- 作者未詳:万葉集で使用されています。
- 読み人知らず:古今和歌集以降から使われるようになったようです。
漢文の用語
- 五言(ごごん):一句が五字からできあがっている漢詩の句。その句からなる漢詩の体を「五言絶句」という。(岩波書店の国語辞典から引用)
- 七言(しちごん):一句が七字からなる漢詩の一体を「七言絶句」という。(岩波書店の国語辞典から引用)
- 絶句(ぜっく):長い詩から初めの4句を断ち切ったので絶句(ぜっく)と言われるようです。
絶句や律詩等について
- 五言絶句(5字×4句=20字)
- 六言絶句(6字×4句=24字)
- 七言絶句(7字×4句=28字)
- 五言律詩(5字×8句=40字)
- 七言律詩(7字×8句=56字)
- 古詩:句数は原則として自由(:例 五言古詩(5字×12句=60字)・七言古詩(7字×6句=42字))墨場必携日本漢詩選から引用
五言絶句詩についてのその他の参考用語
- 第一句は詠い起し(起句)
- 第二句は前の句を受けてそこから発展させる。(承句)
- 第三句は場面を転換する。(転句)
- 第四句は全体を結んで終わらせる。(結句)
- 起承転結です。
律詩についてのその他の参考用語
律詩(りっし)は、八句で構成されており、二句を一つにまとめて聯というようです。
- 首聯(しゅれん):一句と二句をいう。(第一聯)
- 頷聯(がんれん):三句と四句で構成されており対句になっている。(第二聯)
- 頚聯(けいれん):五句と六句で構成されており対句になっている。(第三聯)
- 頚聯(けいれん):五句と六句で構成されており対句になっている。(第三聯)
- 頚聯(けいれん):五句と六句で構成されており対句になっている。(第三聯)
- 尾聯(びれん) :七句と八句をいう。(第四聯)
※ 聯(れん)と連は同じ
※ 頷(がん)は、あご、おとがい(下あご)の意味
※ 頚(けい)は、のどくびの意味
※ 尾(び)は、うしろ、すえ(末)さき、おわりの意味
書道用紙と聯の関係
- 書道用紙の全紙の縦方向に二分に切断した用紙を半切(半折や条幅)という。
- 聯:書道用紙の全紙の縦方向の四分の一か、四分の三の大きさをいう。
- 聯落(れんおち):書道用紙の全紙の縦方向に四分三または三分の二の状態にしたものをいう。
- 対聯(ついれん)は、例えばお寺の本尊に対面している場合の右の柱に一行の漢文が、左側の柱にも一行の漢文が飾られている場合があります。この漢文は対句になっており、このような形を言います。対聯は、門や客間にも飾るようです。
- 聯幅(れんぷく):書道用紙の全紙の縦方向の四分の一にした大きさをいう。半切の用紙を縦方向に二分に切断した大きさも同じです。
釈文の呼び名
- 白文(はくぶん):漢字だけで書かれた文(句続点、返り点、送り仮名などが全くない。)(例:「病従口入 禍従口出」)(岩波書店の国語辞典から引用)
- 訓点(くんてん)を付けた文:>漢文を訓読みするためにつけた返り点、送り仮名、ふり仮名、オコト点等の符号例:「病は口より入(い)り、禍は口より出(い)づ」) 例:「病(ハ)従(リ)(レ)口入(リ)、 禍(ハ)従(リ)(レ)口出(ヅ)」
- 書き下し文(かきくだしぶん):漢文を、かな交じりの日本語文に書きなおす。例:「病は口より入(い)り、禍は口より出(い)づ」
- 口語訳:現代文に読み替える。例:「病は口から入り込み、災禍は口(ことば)から出るものだ。」
- 「読み下す」:漢文を日本文の義順にして読む。(岩波書店の国語辞典から引用)
書く時の心の姿勢
筆の動きに関する用語
- 意先筆後(いせんひつご):書く前の気合、書き終えてからの意気込みで、筆意を言う。
- 気韻(きいん):風格気品ある生命感の意を言う。
- 筆脈:筆のつながりを言い、一貫した呼吸から筆脈が生じ律動が生まれる。
- 筆勢:運筆の勢いであり筆力と同義のものである。