筆
筆の部分の呼び名
※ ここでは、筆の毛の部分を「穂」と表現します。別名は「鋒」です。
軸(筆管)の種類
軸(筆管)の形状に呼び名があります。
- 木軸(木のみで、飾りも補強も無い筆)
- 白竹軸(竹のみで、飾りも補強も無い筆)
- 糸巻軸(穂を付ける側を、糸で巻き補強している筆)
- 両骨軸(軸の両端を骨やプラスチックで飾りを付けた軸)
- ダルマ軸(穂を付ける側が太く、軸(筆管)側が細くなっている軸)
※ 今は、プラスチック製の軸もあるよです。
穂の太さで分類すると
穂の材質、長短、太さの選別は、書作にはある程度の影響があります。
例えば、「私は、穂は太く、長く、材質は羊毛の筆を持っています。」となれば、私はこの筆を使うことにより、「大きい字が書ける事と、一回の墨付けで数多くの字が書ける事と、羊毛の柔らかい特徴ある字を書く事が出来る。」と言うことになります。
太い線の字を書く筆を太筆(大筆)、細い線の字を書く筆を細筆(小筆)と言い分類されています。
- 太筆(大筆) :軸径(直径)が概ね9mmから15mm程度
- 細筆(小筆) :軸径(直径)が概ね5mmから8mm程度
中筆の表現はあまり耳にししませんが、太筆と細筆の中間の筆と判断しても良いと思います。
穂の長さで分類すると
軸の径と穂の長さの比で、短鋒、中鋒、長鋒に分類されています。
- 短鋒 :穂の長さが概ね軸径の4倍
- 中鋒 :穂の長さが概ね軸径の5倍
- 長鋒 :穂の長さが概ね軸径の7倍
穂の材質で分類すると
穂に使われている毛の種類によって、羊毛筆、剛毛筆、謙剛筆に分類されています。また、 穂の色である程度の、筆の弾力性の強弱の判別が出来ます。
- 羊毛筆 :山羊の毛で作られていて、穂は白色系で、毛質の弾力は弱です。
- 剛毫筆 :狸、馬、鹿、イタチなどの毛を混ざり合わせて造られており、主に内部は茶色系、外部は白色系です。弾力は羊毛筆と比較すると強いです。
- 兼毫筆 :羊毛と剛毛の混ざり合わせで造られていて、羊毛と剛毛との混合の割合により弾力は変わります。
線で分類すると
「強い」、「弱い」の使い分けは難しい面もありますが、単純に表現してみました。
1 強い線を書く
- 大き目の漢字:太筆の剛毛筆、又は謙剛筆を使用します。
- 大き目のかな:太筆の剛毛筆、又は謙剛筆を使用します。
- 細字:細筆や面相筆を使用します。
- 写経:写経筆、又は羊毛筆以外の細筆を使用します。
※ 紙面に現れた線は細くても、直筆で書かれた線は強く感じる事は多くあります。例えば「かな作品」の線は強いです。
2 柔らかい線を書く
- 大き目の漢字:太筆の羊毛筆を使用します。
- 大き目のかな:太筆の羊毛筆を使用します。
- 細字:滲みの少ない紙を使用する時は、羊毛の細筆を使用する時があります。
3 細い線を書く
- 筆の太さよりますが穂先を使うと細い線が現れます。
- イタチ毛の面相筆げ描いた線は細くて強いです。
同じ筆でも、筆の使い方次第で現れる線に変化が出る
線の分類
- 太い線:太い筆を使えば太い線が出来ます。細い筆でも筆をつぶして書けばつぶしただけの太さが出ます。
- 細い線:細い筆を使えば細い線が出来ます。太筆でも、穂先を上手に使えば細くなります。
- 強い線:筆の腰を活かし、筆の芯を活かして書いた線は強いです。太さはあまり関係ないと思います。例えば、細筆で書いた和歌の線は強いです。
- 弱い線:筆の腰砕け、側筆で書いた線は弱いです。太さはあまり関係ないと思います。弱い線は書いた紙の裏を見る事により墨の食い込みの程度でればわかります。
墨の濃さ、紙の種類にもよる
- 墨の濃淡:濃墨の線は力強く見えます。淡墨その反対です。ただし。淡墨の魅力もいいものです。
- 滲み多い紙:書くのが大変です。送筆時に迷いがあると余計な滲み部分が出来ますのでサッサ書きますが、わざと滲みを作り線の形に変化と味わいを作る事もあります。
- 滲みの少ない紙:仮名や細字を書く時は滲みの少ない紙を利用する事が多いと思います。滲みが少ないだけに紙面と筆との接触した部分だけが線として現れます。きれいに見えますがが、線の深さに乏しいと思います。(線の深さは見た目の感覚です。紙の厚さ以上の深さはあり得ません。)
筆の使い方
- 筆の持ち方があります。単鉤法や双鉤法等です。
- 筆を持つ姿勢があります。
- 筆の持ち方があります。
- 筆の持ち方があります。
筆の下ろし方
1 新しい筆の場合
- 筆に付いているキャップは外します。
- 筆毛が全没する程度の器を準備し水を入れます。
- 筆毛を水に浸します。この時、軸は水中に浸しません。
- 自然に筆毛に付いている糊が溶け始めます。
- やがて、筆毛の根元部分に付いている糊が溶け柔らかくなります。
- 新しい水で筆毛に付着している糊を丁寧に洗い流します。
- テッシュペーパーや半紙等で筆毛についている水分を抜き取ります。
- 筆の下ろし方はこれで終わりです。墨付けが可能な状態になりました。
- 捌き筆も水洗いします。
ご注意ください
※ 細筆の筆毛は、筆毛全体の半分程度までおろすように示されている文献は多いですが細筆も太筆も筆毛全部を水洗いします。
理由:長い期間、筆を使用しているとやがては筆割れの原因になりかねません。
2 既に使っている筆
筆毛が捌けている筆を使用する場合
- 筆毛の穂先部分を水洗いし毛一本一本に水分を行き届かせます。
- テッシュペーパー等を使用し、筆毛部分の余計な水分を抜き取ります。
- 筆毛の状態を観察し、墨の付けが出来るかを判断します。
- 墨付けが出来る筆毛は、しっとりした状態になっています。
3 筆毛に墨が付いたまま固まった状態の筆に墨を付ける場合
- テッシュペーパー等に水分を含ませ筆毛部分をで包み穂先を柔らかくするか、水洗いをします。
- 筆毛が柔らかくなる前に、無理やり筆毛を曲げるような圧力はかけないことを薦めます。
- 筆毛の状況を見て、しっとりとした状態になったら墨付けをして下さい。